アジア経済とかつての経済大国日本の行方



2010年はスマートフォンが大量に登場した。
そして特筆すべきなのは、SamsungやHTCのような韓国、台湾メーカーからそうした製品が
驚くべき高品質な完成度で発売された。
これが当たり前の事ではなく驚くべきことなのは、
今までならばこうした分野は、日本のメーカーが世界でもっとも優れているはずだと
みんな信じてきたにもかかわらず、それが韓国、台湾などの諸国に市場を奪われつつあることを
現実にはっきりと示したからだ。


私達は今でも日本の製造業の神話を信じ込んでいる。
ところが今や現実は液晶テレビの市場シェアはサムスンとLGが
市場の世界1位2位、レーザープリンタの世界市場でサムスンが世界1位、
半導体市場でインテルについで世界2位、携帯電話市場で世界2位(アメリカ、イギリス、フランスではトップ)
という情勢で、
今や売上高が1168億ドルを越える世界最大の電機メーカーの座を
日本ではなく韓国企業が占めているという現実がある。


もちろん、こういう現実は今日突然あきらかになったわけではない。2007年ぐらいには
もうこういう記事がでていた。

企業レベルでも、よく言われるのが、サムソン(Samsung)の飛躍。日本の大手家電メーカの純利益額上位10社を合計しても、サムソン電子一社の純利益の半分にも満たないし、それをばねにした将来の収益源作りである設備投資額でも格段の差がついています。

http://japan.zdnet.com/blog/tokuda/2007/01/28/entry_27015209/

さらには2008年の時点で、国際特許出願ランキングのトップはパナソニックを抜いて中国の通信機器メーカーであるHuawei Technologies Co., Ltd.になっている。
イノベーション力でも日本は追いつかれているということを意味するといっていい。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20090202/164978/


そして2009年には
韓国は貿易黒字で日本を追い抜く勢いになっていた。


【ソウル4日聯合ニュース】知識経済部は4日、年初から10月までの貿易黒字は345億8300万ドル(約3兆125億円)で、年内の400億ドル達成は無難と見られると明らかにした。
 一方、日本は9月までの貿易黒字が110億ドルにとどまっており、下半期は回復傾向が見えるものの、ことしの黒字規模は200億ドル前後と予想される。韓国の年間貿易黒字が初めて日本を超える見通しだ。同部関係者は「日本は韓国より貿易規模も黒字額も大きい国で、韓国が日本を追い越すのは史上初だ」と話している。

http://japanese.yonhapnews.co.kr/economy/2009/11/04/0500000000AJP20091104000600882.HTML


かつて、世界最大の経済大国であり、技術大国であることを誇っていた日本は、
今、まるで麻酔でも効かされたかのように何の痛みも苦しみも実感をともなわず、
静かに危機に瀕している。

 終戦から約60年。日本は再び、違う形で、「新たな敗戦」に向かいつつあるのかもしれない。というのは、いま急速に日本の財政・経済は悪化しつつあるからだ。象徴的な数字は、現在の日本が抱える公的債務残高(対GDP)(公的債務残高とは国・地方が発行した国債や地方債の残高や借入金などの合計をいう)の190%だ。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20100907/216139/


日本は貿易黒字によって利益を出す製造業のまわりに企業城下町が広がり、そこへの往来のための交通網や
そこで雇用される人口が生活するための店舗、そこで暮らす人々の欲望をみたすための繁華街などによって
まわっている経済がささえていた側面がある。
しかし日本企業は次第に国際競争力を失いつつある。
国際特許出願数でみても分かるようにイノベーション力で負け、貿易黒字額でみてもグローバル市場で負けはじめている。
根底にあるのは価格競争力だ。
途上国から生産される製品が引き起こす価格破壊が、市場シェアを一変させた。
安い製品で市場を席巻したサムスンなどは、得た資金を運用して品質も高められる。
安くていい製品。かつて日本企業の売りであったコンセプトが、今はアジアの他企業にお株を奪われた。
日本は一部の巨大企業とそこと取引をする無数の企業群とでまわっている。
巨大企業の市場シェアがぐらつくと税収が左右され、自治体や国家経済そのものの破綻の恐れまである。
http://www.j-cast.com/2008/12/10031837.html


かつて日本は、アジアの盟主的存在だった。
それはアジアの中で唯一、東洋の中の西洋であった時代があったからだ。
文明開化によって、アジアの中で唯一近代国家であった時代があった。
そうした時代に築きあげた誇りが、今は現実を直視するのをさまたげていないだろうか。
文明開化以前、もともと日本はかつて漢の那国の倭王を名乗っては中国に使節を送る属国的存在であった。
火縄銃であったり軍艦であったり、西欧の技術を手に入れていち早く近代化したときと
同じような、新たなるトレンドへの敏感で急激な適応力を発揮できなければ、
日本は再び単なる東洋の東の最果ての島国に戻る。


http://www.nikkei.com/biz/blog/article/g=96958A9C93819499E0E6E2E3888DE0E6E2E1E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;p=9694E2E3E2E0E0E2E3E2E1EBE5E7
今、国内企業は海外へ逃げ出しつつある。
あるいは中国企業による国内企業の買収の動きもある。
理由は単純だ。
市場競争は高品質さと安さの競争だ。
そしてソニーはかつて高品質高価格ブランドを打ち立てて一旦撤退している。
高品質で高いものではなく、安いものが売れることがはっきりした。
そしてサムスンの製品は国産の製品より安かった。
価格競争で勝負するのであれば、原価はますます安くしなければならない。
安く仕入れて高く売る。沢山売るために価格を下げる。
少しでも企業としての収益率を上げるために、仕入れ値も人件費も下げなければならない。
そうすると海外に工場を作るのが合理的だという計算になる。
国内の工場を国外に移すと、かつて工場にあった雇用がなくなる。そしてそのまわりにあった企業城下町が空洞化する。
そうやって日本は次第に荒れ果てていく。
しかし国外に移さなければ高いコストから生み出される高い製品では市場シェアをとれず結局工場が閉鎖し、
やはり企業城下町が空洞化する。
したがって現実におきたのはどちらでもない対応だった。工場は国内に残して人件費を下げていった。非正規労働者を増やすしかなくなっていた。
そして経済はゆるやかに閉塞感を強め、空洞化のプロセスはゆっくりとしかしやはり確実に進行した。


現状はとてつもなくきびしい展望だと思う。
恐るべきハングリー精神をもった中国エリートたちに対抗しえるようなサムライが日本にはもういない。
いるのは草食系の、プライドだけ高いNEETだ。
高度経済成長をささえてきたような過労死もいとわない過重労働は、ブラック企業を訴える風潮のなかで
誰も耐えることができなくなくなった。


これからの日本はもはや世界のトップでありつづけることは難しそうだ。
その前提に立ったとして、今後の日本をささえていくのは今までも日本をささえてきた職人力だろうか。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080214/147254/
フェラーリなどは実は中小企業だ。職人達が一台一台を手間をかけて芸術作品のように仕上げる。
そういうやり方で、世界を席巻することはできないかもしれない。
しかし現にブランドとはそういう職人の芸術性でなりたっている。
日本の強みもまた、そうした職人芸だった時代がある。
その一方ではこういうこともある。

「iPad部品日本製影薄く」の見出しは、日本企業は世界の下請けに甘んじろ、ということを言っているのと同じです。

http://blog.goo.ne.jp/greenip/e/ad61b9f578bfe4ce78fbb4ceb243981f


日本の消費者は世界でもっとも品質にきびしい、と言ったどこかの社長がいる。
日本人が要求する水準は世界中でもっとも高い。ノキアの携帯は海外で使うには便利だが、
国内では携帯がフリーズしたり再起動したりする
ことは日本の常識では受け入れられない。冷蔵庫や車がエンジンをかけても起動に時間がかかったりしてはならないのと同じで、
家電は再起動するということが日本社会では考えられない。
そういう水準を要求する日本市場こそが製品にもっとも高品質な要求をする市場であり、
だからこそ日本人はそんな要求を満足する高品質な設計を描けるのだと言った。
これは日本人は贅沢なので、ないものねだりなだけだともいえるのかもしれない。
しかし、普通の製品で満足いかない日本人が、真に高品質な製品仕様を描けるという言葉には説得力があるように思う。
これから経済がどうなるのか、不透明ではある。
日本企業が生き残るためには何が必要なのか、色々な仮説をそれぞれの企業が試行していく中で
道は開かれてくるのだろうか?


参考:
Life is beautiful: 「ガラパゴス問題」に対する少し前向きな一考察
http://satoshi.blogs.com/life/2010/12/garapagos2.html
Appleと日本の家電メーカーのデザインの違いを考える
http://d.hatena.ne.jp/teruyastar/20111001/1317458330