SIerの生存戦略をフレームワークで分析する

せっかく戦略フレームワークについて学んでみたので、日本のSEについて
戦略フレームワークで試しに分析してみよう。SEといっても色々な側がいると思うので、
ここではSIerのSEという一般的なSEの未来についての分析に的をしぼって考えていく。
3つの観点で分析を行う。


  ・外部要因と内部要因の分析
  ・時間軸要因の分析
  ・業界内でのポジショニングに応じた対応策


まず、SIerの外部要因として洗い出したのが以下。


  新規参入業者: ソフトウェアベンダ、インフラ保有業者のクラウドサービス
  代替品:    ERPパッケージ、クラウドERP
  売り手:    受託ソフトウェア開発会社
  書い手:    各業界情報システム部門
  競合他社:   外資ITベンダ


基本的にはSIerはこれまで情報システム部門からシステムを受注して
受託ソフトウェア開発会社を下請けにしてオーダーメイドでウォータフォールモデル
のビジネスの工数を売ることで商売していた。
しかしハードウェアに強みのある外資ITベンダがシェアを広げていること、
クラウドサービスの展開も進んだこと、EAの観点からERPパッケージのほうが全体最適にかなう
というニーズがることなどの脅威から、オーダーメイドでシステムを新規に作る
というビジネスモデルにリスクが顕在化している。


続いてSIerの内部要因の洗い出しだ。


Shared Value: 顧客の要望からシステムを設計するという顧客思考がベースにある。
       御用聞きにも陥るリスクがあるのと同時に、ベストプラクティスを
       提示する力に弱みが生まれる

Style:    自分たちが製造するのではなく、設計以降を外注して設計とテストを行う。
       決まった下請けとの付き合いが続けば、それがそのSIerの強みや得意分野
       を規定する面がある。

Staff:    ITのスペシャリストではなく、新卒一括採用をOJTで現場教育したり研修で
       技術を習得させる。重視されるのは技術力よりもチームワーク力である。

Skill:    設計を行う能力とコミュニケーション能力が求められる。顧客と下請けの
       間でうまく橋渡しすることとチーム内での役割の執行がSIerのSEの業務
       なので、技術的な部分は下請け任せになる。プログラムがかけないSEもいる。

Strategy:  SIerもパッケージ化、クラウド化したサービスを提供しはじめている。
      社名ブランド、商品ブランドで日本品質を売る戦略以外にも
      SIer自身が海外ベンダの買収によりビジネスモデルのロールアウトを進める例もある。

Structure: いわゆるITゼネコン体質。必要とされているのは下請けマネジメント
      とプロジェクトマネジメントなので、ゼネコン体質になる。

System:   工数ビジネスで立ち行かないとしても、従来のアウトソーシングビジネス、
      パッケージ化で販路を広げる仕組みはできてきている。外資系競合他社よりも
      優位な点はあまりなくても、2バイトコードの壁で商売ができている。


次にSIerやSEという職種がたどってきた歴史的な変遷から時間軸要因の課題と機会
を考えてみる。


  1.汎用機の時代
  2.パソコンの普及
  3.オープン系システム、WEBシステムの普及
  4.ERPパッケージ化
  5.クラウド


今のSIerのマネージャー層は汎用機でレガシーを
やってきた世代がほとんどであろう。オープン系システムにマイグレーションすることが
従来の囲い込みを失う競争にさらされるリスクがあることに認識がそれほど
ない可能性があるか、あるいは自分たちの業務知識を過信しすぎている。
WEBシステムになれば、作れるところはほかにもあるので、
競合にさらされ、技術力で勝負しなければならないが、SIerは技術職を専門職で
採用していないので専門職を育てる必要性がある。
ERPクラウドの普及についても、SIerのビジネスを脅かす。
自分たちのERPクラウドで勝負できると思っても、スケール効果で価格勝負に
なったときに勝負にならない。対応策として考えられるものは少なくとも3つある。


  ・自分たちが強み(コアコンピタンス)としているものが何なのか、それを磨く
  ・日本の顧客の特殊性に甘えるだけでなく、日本の品質のベストプラクティスをロールアウトする提案力
  ・上記実現のためのSIerの社内コンサルの強化、およびビジネスマネジメントライフサイクル運用。


最後に、
個別に業界内ポジショニングごとに生き残りに必要な生存戦略
変わってくる。ポジションごとの打ち手策は以下だ


  ・大手有名SIer:  EA、ERP化、グローバル化とその中での競争力の強化、
            および独占プラットフォームのグロバールスタンダード化を狙う
  ・二位クラスタ: 従来とは違うベストプラクティスのモデル研究開発への予算投資、
            主流ERPとは異なるSCMモデルの提案
  ・その他クラスタ: 中小企業向けの価格帯の低いサービス、特殊要件へのビジネスの特化を進め、企業体力を強化する


どうだろうか。Googleモトローラの携帯部門をとりに行ったのは特許目的だといわれているが
私は違うと思う。Googleのビジネスはすべてがプラットフォームを自分たちが取るための戦略だったと
考えれば一貫しているからだ。プラットフォームを握ったとき、何が起こるか。
任天堂ファミコンがそうだったように、マイクロソフトWindowsがそうだったように、自分たちのプラットフォームに
ライバル会社を引きずり込んで、自分たちに有利な土俵で勝負できるのだ。
ハードウェアも、それが市場シェアを独占したときには、それがプラットフォームになる。グローバルスタンダードになる。
大手が狙うべきなのはそういう土俵のテリトリーの奪い合いでの勝利だ。
二位以下のクラスタは、大手と同じことをやっても勝負にならない。まったく新しい価値を提示して、
トップを奪う必要がある。まったく違う戦略が必要なのだ。それ以下のクラスタは、言ってしまえばスキマ産業を
狙って生き残りを図りながら、徐々に企業体力を高めてチャレンジできるだけの資本と技術をかき集めることで
成長しながら生き残ることを目指すのだ。おそらくそこで淘汰も起こる。生き残っていったものが、死んだものの
利益を奪い取っていく熾烈な競争になると思う。
これからの競争は過酷になる。システムがオープン系言語を前提にしているということは、つまりは
誰でも参入できるということだからだ。その中で、トップ集団は再び自分の独占プラットフォームへの囲い込みをかけるだろうし、
それ以外のクラスタは技術的な勝負と、新しいものを生み出す競争との中で生き残らなければいけなくなってくるのではないだろうか。


私なりの分析は以上である。
やや私見に走っているが、フレームワーク思考の体裁をなしているだろうか?
今後少しずつ身に着けていければと思っている。
また、本来であればこうした定性的な分析に加えて、マーケティング屋や官公庁の白書にあるような
数値データなどの定量的な指標を使って、比較で現状がわかるような分析を行うことが必要だと思う。
理想を言えば今回の分析には下記データがほしかった。


  ・レガシー技術者とオープン系技術者のITSSスコアの過去20年の推移
  ・クラウド市場規模の年間推移と外資と国内企業の割合
  ・ERPパッケージの市場規模年間推移と受託システム開発市場規模の年間推移
  ・レガシー案件とオープン系案件の市場規模の年間推移
  ・大手SIerの収益内訳平均値と下位SIerの収益内訳平均値


ただ個人でこういうデータを収集するのは大変労力とノウハウが必要になるだろうということで、
定量的な議論になっていないのをご容赦願いたい。