会計学入門 会計・税務・監査の基礎を学ぶ

会計学入門―会計・税務・監査の基礎を学ぶ

会計学入門―会計・税務・監査の基礎を学ぶ

本書は冒頭から某日本を代表するメーカー二社の
貸借対照表(B/S : Balance Sheet)と損益計算書(P/L: Profit & Loss Statement)の比較から入っている。
インターネットのおかげで、こうした諸表は簡単に手に入るようになったが、
かといって何の予備知識もなければこうした決算公告書類から有益な情報を読み解くことはできない。
貸借対照表は、ざっくりいえば資産と負債、それに資本の情報であり、
損益計算書は、収益と費用の情報で作成されている。
これらの情報からは、企業の利益獲得能力(収益性)や借金返済能力(安全性)についての
定量的な分析が可能だったりする。


例えば、収益性を分析するには投入した総資産がどれだけの純利益を生み出したかの割合(総資本純利益率)を計算できる。
「総資本純利益率(当期純利益÷総資本)」=「売上高純利益率(当期純利益÷売上高)」×「総資本回転率(売上高÷総資本)」
で算定され、売上高の利幅に対して投入した資本が売り上げ回収された回転数を掛けている。
利益の大きい商品を早いサイクルで売っていけば、収益力は上がるということを示してもいる。
利益の低いものをたくさん売ったり、利益の高いものを少ししか売れなかったりしていれば、
総資本純利益率という形でその収益力の低さは表れてくるのだ。


会社の安全性を分析する材料は、貸借対照表から得られる。
流動比率流動資産÷流動負債)」を算定することで流動負債をすぐに返済できるだけの流動資産
あるかどうかがわかるので、短期の安全性がわかる。
「固定比率(固定資産÷自己資本)」を算定することで、固定資産を自己資本で取得できている割合がわかる。
これは長期的な安全性がわかる。
自己資本比率自己資本÷総資本)」からは借入金の依存度が分かる。
こうした数値を、他社と比較してみることで、その会社の経営状態の定量的な分析が可能になるわけである。


ただ、いきなりこんな話に入ってもよく分からないというのが正直なところである。
財務諸表を理解したければ、複式簿記を理解しなければならない。
複式簿記はdouble-entry bookkeepingと言われ、単式簿記との違いは現金の入りと出しか捉えないのではなく
例えばものの増減と現金の増減、のように取引を二面的に捉えて勘定の左側と右側に記入する。
原因別計算が自動的に行われる表記法だ。
企業は取引を認識してから以下のような段階で財務諸表を起こす。


  1.取引の認識
  2.仕訳帳での仕分け
  3.元帳への転記
  4.試算表の作成
  5.決算整理
  6.帳簿決済
  7.財務諸表の作成


これら一連のプロセスが、決算という業務になる。


ほかにも本書は財務諸表、会計基準原価計算法人税についてかなり詳しい説明があるのだが、
やや私には難解であった。もう少しやさしめの本をあたってみるべきかもしれない。
興味深かったのは、会計監査についての章だ。
公認会計士は監査基準に従って財務諸表に会計操作やら粉飾決算やミスが無いかを監査し、監査報告書を出す。
財務諸表の作成段階でのミスや虚偽記載については内部統制で防止・発見される場合が多いだろうが、
監査人はそこをくぐりぬけてくる問題を摘発して指摘するのだ。
監査手続きには、実物検査、立会い、事実確認、関係者への質問、現場視察、文書の閲覧、領収書や請求書の信憑突合せ、
帳簿突合、計算突合による検算、勘定分析による勘定の妥当性の精査、財務データと非財務データの間の整合性の分析
などがある。
こうしたことについて詳しく書かれているので中々面白い。


個人的に一番面白かったのは、
末尾にある会計基準の弾力性についての議論で、会計処理方式の統一性と弾力性については
専門家の間でも常に意見が対立してきたという話である。
会計処理を統一性をもたせると、さまざまな業務実態に本当に適した会計処理にならないという意見から
弾力性が必要なのではないかということになっているようなのだが、弾力性を利用して利益操作が
行われるのではないかという意見もあるようだ。
これは身近な例で言うと、減価償却費の算定に定額法を使うか定率法を使うかの明確な基準を設けるか設けないか
という話で考えることもできる。
冒頭に決算公告を分析されている某大手メーカー2社の間でも、
棚卸資産の評価や減価償却の方式がそれぞれ別の方式を使っている。
実態に即した方式を選択できるようにするということと、統一的な基準で会社間の実態を比較できるように
したいということとの間で、理想の会計基準はまだまだ議論がつづいていくのかもしれない。


参考:
無料なのに高機能すぎる見積・請求書発行ソフト『三森支太郎』
http://www.lifehacker.jp/2011/09/post_1735.html