WEBキャンペーンのしかけ方

Webキャンペーンのしかけ方。 広告のプロたちがつくる“つぎのネット広告”

Webキャンペーンのしかけ方。 広告のプロたちがつくる“つぎのネット広告”

トヨタの「ゼロクラウン」「マークX」やダイハツの「タント」、モトローラ「MOTORAZR」などの
WEBキャンペーンを手がけた阿部晶人氏、
ナイキジャパンの「NIKE+」、日本コカコーラの「ジョージア」などのWEBキャンペーンを手がけた渡辺英輝氏、
博報堂で2006年より電通のプランナー/アートディレクタの螺澤裕次郎氏、
アサツーディ・ケイマイクロソフトXBox」などのWEBキャンペーンを手がけた伊藤直樹氏らによる
広告のプロたちがつくる”次のネット広告”についての本。


「一方的に話す人は嫌われる」とすれば、これまでの広告メディアは一方的で一方通行だった。
ネットを使った広告メディアにできるのは、参加してコミュニケーションできるような双方向のキャンペーンなのだ
ということを感じた。
2004年に出版された「ホリスティック・コミュニケーション」(秋山隆平、杉山恒太郎著)によれば、
インターネットではこれまで主流とされてきたAIDMAの法則よりもAISASの法則で説明されるという。
AIDMAの法則はローランド・ホールによる消費者の購買決定における心理的プロセスを説明するモデルで、
ある商品に対して次のようなプロセスで購買に至る。


  1.「注目(Attention)」する。
  2.「興味(Interest)」を持つ。
  3.「欲しいと言う要望(Desire)」をもつ。
  4.「記憶(Memory)」する。
  5.「行動(Action)」を起こす。


これに対してAISASの法則では、


  1.「注目(Attention)」する。
  2.「興味(Interest)」を持つ。
  3.「検索(Search)」する。
  4.「行動(Action)」を起こす。
  5.「意見共有(Share)」する。


というプロセスを経るとしている。
ネットでの諸費行動は、記憶のかわりに検索を行い、購買で終わることなくブログやSNSなどのCGMでの
商品の感想や評価などを「意見共有(Share)」する。
「検索(Search)」から「行動(Action)」へと導くために企業が自社サイトを充実させることは当たり前の
ことになったが、WEBマーケティングの鍵を握るのは消費者がなにをもって「比較」「検討」し、判断しているか
という部分なのだという。
比較や判断というと、私はどうしても行動経済学者ダン・アリエリーによる研究が明らかにした、
一見不要に見えるある種の選択肢を入れることで、他の選択肢の選択率が逆転するという調査や、
人は他人が欲望すると思うものを欲望するという、ルネ・ジラールの「欲望の三角形」などを思い出した。
WEBキャンペーンというのは、ユーザ参加型のイベントを起こすということである。
現代においてはマスメディアの影響力は下がり、ネットでのクチコミ(バイラルマーケティング)の影響力が上がった。
2006年にインターネットのクチコミで大ヒットした男前豆腐店の「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」は、
アルファブロガーにとりあげられた瞬間にクチコミの広まる速さが劇的に変わった。


CGMにおけるクチコミ形成のプロセスはスタンフォード大学における「イノベーター理論」にのっとって考えると
分かりやすいそうである。これはイノベーションを取り入れる消費者を5つのグループに分類する学説だ。


  1.「革新者(Innovators)」2.5% 冒険心にあふれ、新しいものを進んで採用する人々
  2.「初期採用者(Early Adopters)」13.5% 流行に敏感で、情報収集を行い見極める影響力が大きい人々
  3.「前期追随者(Early Majority)」34.0% やや慎重だが平均よりも早く新しいものを取り入れる人々
  4.「後期追随者(Late Majority)」34.0% どちらかといえば懐疑的な人々で周囲が取り入れてから追随する
  5.「遅滞者(Laggards)」16.0% 保守的で流行や世の中の動きに関心が薄く、伝統になるまで採用しない


「革新者(Innovators)」グループから普及し始め、「初期採用者(Early Adopters)」から後の層に順に伝播していく。
「革新者(Innovators)」がいわゆるアルファブロガーだとすると、このプロセスがクチコミの広がり方にも似ている。
その上で、「初期採用者(Early Adopters)」と「前期追随者(Early Majority)」の間には
容易に超えられない大きな溝(キャズム)があり、これを超えなければいかなる優れた商品でもブレイクすることが
できないというのが、マーケティングコンサルタントのジェフリー・A・ムーアが提唱する「キャズム理論」である。


2005年の10月、ある電気製品メーカーがブログを使ってWEBキャンペーンを展開したところ、
製品レビューをつづるブログがヤラセなのではないかという疑惑が巻き起こり炎上した。
「(新製品は)Macでは接続できないので新しくWindowsマシンを買った」というレビュー記事を書いたブログの
以前の記事に、Windows用のキーボードの写真が掲載されていたという。
クチコミマーケティングを自作自演した(ステルスマーケティングともいうらしい)ところ、だまされた消費者が激怒したわけだ。
WOMMA(Word of Mouth Marketing Association)というクチコミマーケティングの促進や改善を目的に
アメリカで発足した業界団体(ネスレ、AOL、DELL電通アサツーディ・ケイなど350社が加盟)の
倫理規定は下のようなクチコミマーケティングの規定を定めている。

1.消費者に報酬をわたしながら、企業との関係を明らかにすることなく商品推奨を依頼する行為をしない。
2.消費者同士のクチコミにおいて、サクラを起用したり、覆面マーケティングをおこなわない。
3.クチコミでなにをいうべきかを消費者に指示しない。
4.クチコミ唱道者の本当の正体について、消費者を混乱させたり誤らせたりするような開示はおこなわない。
5.クチコミマーケティングプログラムに子どもは関与させない。
6.競合企業のネガティヴな情報流布を目的とした活動などをおこなわない。
7.既存ビジネスの慣習を理解し、既存ビジネスで認められている手法は、その領域では継続して活用する。
  (すでにテレビや新聞などで禁じられているルールはインターネット上でもやってはならない)。
8.クチコミマーケティングを提案、受注する際には、広告主にこれらのリスクの説明を行う。


クチコミマーケティングの分野ではこれまでの検索エンジンの表示順位を上げるためのテクニックや
SEO(Search Engine Optimization)といった技術よりもむしろSMO(Social Media Optimization)が重要になる。
サーチエンジンを相手にするのではなく人を相手にしたコンテンツ力が重要になるという。


"感動は人に言いたくなる"
"人の心をつかむのがコンテンツの力なら、クチコミを起こすのもコンテンツの力だ。"


本書がWEBキャンペーンを成功に導くためのプランニング方法として紹介している興味深い概念「DRIPメソッド」というものがある。


  1.Deep : 一歩踏み込んだ深い関係
  2.Interactive : 対話から成り立つ関係
  3.Partivipation : 参加して実感
  4.Repeat : 誰かに紹介したくなること


WEBでの企業広告は企業とユーザとの双方向の関係と、ユーザ同士の双方向の関係を作り出す、参加型の感動を
作り出すことが重要なのかもしれないなということを感じた。


参考:
アーリーアダプター@IT情報マネジメント用語辞典
http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/earlyadapter.html
モノを売るのではなくて、ストーリーを売るという手法
http://d.hatena.ne.jp/inouetakuya/20110822/1313981013
営業ができる人とできない人の違い
http://d.hatena.ne.jp/gothedistance/20101109/1289228966
インターネットの商品情報エコロジー
http://d.hatena.ne.jp/Hyperion64/20110822/1314017935
さよならジョブズ。稀代のマーケッターが仕掛けた広告10選
http://d.hatena.ne.jp/y_sequi/20110826/1314317215
そろそろホッテントリはてブも旬は過ぎた
http://d.hatena.ne.jp/job-1-21/20110831/1314725976
はてなブックマークの歴代ホッテントリ TOP100
http://d.hatena.ne.jp/ramyana/20081022/1224695284
2chコピペブログ界隈じゃ相互ブックマークが常識
http://anond.hatelabo.jp/20110901191530
○○日で月間アクセス○○万PVを達成した方法の真実なんて1つしかない
http://anond.hatelabo.jp/20110830144753
最近目にした「ブログのアクセス○倍アップした私のエントリー」的エントリ
http://anond.hatelabo.jp/20110825180047
はちま寄稿「俺はゲハをまとめてるだけ」ほか
http://d.hatena.ne.jp/EXAPON/20110905/p2
ネットでお得に買い物するためのサイトや情報をまとめてみました
http://d.hatena.ne.jp/moto_maka/20110905/1315164813
ウェブサイトの課題発見のために、筆者が普段から使っている「解析系ツールボックス」の中身を紹介!
http://d.hatena.ne.jp/ryuka01/20110906/p1
はてなブックマークのやりすぎちゃったかもしれないSEO
http://d.hatena.ne.jp/Hamachiya2/20090609/cloaking
はてなブックマークの現状
http://d.hatena.ne.jp/tt_clown/20110906/hatena_bookmark_spam
非モテタイムズアクセス解析雑感
http://d.hatena.ne.jp/fut573/20110428/1304077380
なぜマーケティングは嫌われるのか?
http://d.hatena.ne.jp/elm200/20110924/1316815607
潜在ニーズを探る3つのマーケティング手法
http://d.hatena.ne.jp/aureliano/20111013/1318467309
日本の異能 岩崎夏海氏「ベストセラー作家から炎上ブロガーへ。転落+復讐こそ作家の歩むべき道」
http://d.hatena.ne.jp/aureliano/20111024/1319463493
1000PV/日の稼ぎ方|まとめて2ちゃんねるの場合
http://d.hatena.ne.jp/s025236/20120109/p1
ステルスマーケティングなんてもう古い!
http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20120112#p1
今年のWEBマーケティングがどうなるか考えた
http://d.hatena.ne.jp/mtakano/20120113/1326461693