TPP: Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement

図解よくわかるFTA(自由貿易協定) (B&Tブックス)

図解よくわかるFTA(自由貿易協定) (B&Tブックス)

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について理解するためには、「FTA(自由貿易協定)」「EPA(経済連携協定)」
について理解する必要がある。
日本では自国が関係しているFTAEPAと呼び、他国同士の貿易協定をFTAと使い分けている。
FTAの目的は下の6つである。


  ・関税撤廃
  ・サービスへの外資規制撤廃
  ・投資規制撤廃、投資ルールの整備
  ・知的財産制度、競争政策の調和
  ・人的交流の拡大
  ・各分野での協力


FTAとは「2つ以上の国や地域の経済をできるだけ統一化する協定」である。
企業のビジネスがグローバル化すればするほど、国と国をまたがる際の関税や経済的な規制は制約になる。
国家の枠組みを維持したまま、経済的な壁を取り払って輸出/輸入の敷居を下げ、貿易を活性化させるための取り決めだ。
たとえば2005年4月1日に発行した日本-メキシコ間のEPAの発動後、一年後には二国間の交易は40%弱増加している。
FTAには「貿易創出効果」と「貿易転換効果」がある。ある国とある国がFTAを結ぶと、
両国間の交易は増加する(貿易創出効果)一方で、そのあおりをうけてその国とFTAを結んでいない国への交易は
現象する(貿易転換効果)。


FTAの延長線上での経済ブロック化は世界中で進んでおり、代表的なものとしては下記がある。


  ヨーロッパ
    ・EU欧州連合
    ・EFTA(欧州自由貿易連合)
  アジア
    ・ASEAN(東南アジア諸国連合)
    ・SAFTA(南アジア貿易地域)
    ・GCC(湾岸協力会議)
  アフリカ
    ・SACU(南部アフリカ関税同盟)
    ・COMESA(東・南部アフリカ市場共同体)
    ・UEMOA(西アフリカ経済通過同盟)
    ・EAC(東アフリカ共同体)
    ・ECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)
    ・SADC(南部アフリカ開発共同体)
  アメリカ大陸
    ・NAFTA(北米自由貿易協定)
    ・CACM(中米共同市場)
    ・CAN(アンデス共同体)
    ・CARICOM(カリブ共同体)
    ・MERCOSUR(南米南部共同市場)


日本の場合、規制緩和外資産業を受け入れた結果として、国内産業はかなり弱体化してしまった。
貿易黒字で稼ぐ外需産業を中核としながらも日本は関税で輸入量を規制しながら、
内需産業をまもることで経済がまわっていた社会だからである
トヨタ車を世界に売りながら国内でしか売れないガラパゴス産業も保護してきた社会)。
規制緩和によって輸入規制がなくなると、そうした内需産業が海外の競合に駆逐されてしまう。
一方で、外需産業(自動車や重機など)はFTAを結ぶことで海外へ輸出しやすくなる。
関税が削減されることで円高の影響を和らげ、工場を海外移転することなく海外で戦える要因にもなる。
日本の地方にあった工場が関税や円高などの要因から海外へ移転しなくてすむのであれば、国内の雇用も維持される。
しかし一方では内需中心の弱い産業、例えば農業など、高い関税をかけることで保護されてきた産業にとっては
これは大きな脅威になる。極端に言えば日本は高い関税でコシヒカリタイ米から守ってきたわけだが、
そういう産業は変革を進めなければ格差が一段と深まり、食料自給率が守れなくなる。
さらに、FTAの導入によってIT技術者、医者、弁護士などが海外から流入してくる。
インドや中国からのIT技術者の流入によって内需中心の日本のSI産業が受ける雇用の影響は大きい。


TPP(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership)とは、2015年までにアジア太平洋諸国の
協定国間の貿易における工業品、農業品にかかわらない関税撤廃と貿易自由化を目指したFTAである。
これはシンガポールニュージーランド、チリの3カ国で発効された協定で、
その後アメリカ、オーストラリア、ベトナム、ペルー、そしてマレーシアが協議に加わった。
そして日本、カナダ、フィリピン、中国、韓国、コロンビアが参画への関心を高めている。
日本はTPPを日米FTAだと捉えているが、中国がこれに関心を示しているいることで、
日本がTPPに入らずに事実上の米中FTAとなった場合、貿易輸出国である日本が最大貿易相手国の
米国、中国への輸出産業で競争できなくなり、重機や自動車産業が他国企業との競争に負けて
日本のGDPの中核をなす輸出産業が衰退する(かわりにコシヒカリガラパゴスケータイやSI産業が守られる)。
アジア太平洋諸国がすべてTPPに参画した場合、EUよりも巨大な経済ブロックができあがる。


だが、なにも考えずにTPPに参画すれば、
トヨタなどの日系グローバル企業が海外でさらに稼げる半面、内需産業が衰退する格差拡大をともなう経済成長を選択
したことになる。
また逆になにも考えずにTPPから孤立すれば、
内需ガラパゴス市場を保護するために日系グローバル企業の海外競争力を弱め、トヨタなどの日系グローバル企業は
日本の地方に工場を建てずに海外に工場を移して現地生産する方法に切り替えるので、日本の雇用がますます悪化する。
日系グローバル企業が工場を海外移転するということは、その工場に部品を供給してきた下請け町工場が倒産し、
そこも雇用がなくなるということである。そうした人たちが消費するための消費財を供給してきた商店街が崩壊する
ということでもある。
TPP問題は、犠牲になる内需中心のSI産業や農業を改革した上でTPPに加入することができれば一番いい。
しかし今まで保護されてきた内需産業で、国際競争にさらされて生き残るために必要な改革が起こっているかどうかが
問題なのだと思う(起こっているのは単なるTPP反対運動だけなのである)。




参考:
外務省 経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/
英語学んで国滅ぶ - 『日本人の9割に英語はいらない』
http://d.hatena.ne.jp/the-world-is-yours/20110909/p1
TPPについてのウソとホント
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51751375.html
失業のリスクは農家だけではない!TPPに参加すれば企業経営の方針もよりアメリカ型に近づく
http://d.hatena.ne.jp/rio_air/20111026/p1
日本から見ればTPP市場はアメリカが85%である事実
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20111027/1319704940
TPPって何が問題?
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20111028#p1