IT産業のBusiness to Business(BtoB)とBusiness to Customer(BtoC)


IT業界ではよくBtoBやBtoCという言葉が出てくる。
BtoBは、対企業向けのシステム開発であり、BtoCとは対個人ユーザ向けのシステム開発のことだ。
この切り口は今、両方とも大きな転換点をとおっている。
BtoBはデータセンターの仮想化されたリソースを利用して、
サービスだけを利用するクラウドの流れによって転換点を迎え、
BtoCはデータセンター上のソーシャルプラットフォーム上にソーシャルアプリプロバイダが構築した
サービスをスマートフォンのような端末から利用するソーシャル化の流れによって転換点を迎えている。


よくわかっていない評論家は、クラウド化の流れを中央集権型から分散型への流れだと評しているし、
ソーシャル化も個人メディア化の流れだと評している。
しかし、技術的にみると、集権のあり方が各企業内やゲームハードメーカから
データセンターへと集権化したので、むしろ超集権構造化したと見たほうが、構造を捉えやすい。


SIerと呼ばれるNTTデータ型のビジネスモデルを持つIT企業にとって、
これがとてもきびしい転換点である最大の理由は、
開発モデルの変更を強いられる点にあるだろう。
SIerウォーターフォールモデルでオーダーメイド開発を対企業向け(BtoB)に行う業態であった。
そしてソフトハウスは逆にプロトタイピングモデルやアジャイルパッケージソフトをどんどん
アップデートしているのが通常の開発モデルであった。


対個人向けの開発(BtoC)を業態とするゲーム業界はそれとはまったく逆の発想である。
パッケージは後から変更が効かないので丁寧に設計して出し、
ソーシャルゲームはリリース後にKPI(重要業績評価指標)やARPU(月間電気通信事業収入)を分析しながら
細かくユーザの離脱箇所に手を入れてアジャイルで改修を継続していく。
つまりマーケットインとプロダクトアウトに対するモデル選定がまったく逆なのである。


私はこれはSIer側の落ち度だと思っている。
ITゼネコンとしてのSIerは、ウォーターフォールモデル型の開発のほうが利益が取れる。
顧客のニーズにあったものを作るのではなく、システムに業務を合わせることを強いるビジネスシステム産業
ならではの怠慢だ。結果として、銀行や空港や列車、証券取引所の基幹システムがユーザのヒューマンエラーや
システム統合のバグによってトラブルを繰り返してきた。


一方、システムがユーザを満足させなければビジネスが成立しないゲーム産業は
パッケージに対して徹底的に作りこみ、ソーシャルアプリはリリース後もどんどん改修しながら
とにかくユーザの要望をいかに満たせるかという視点で、より適した開発モデルを選んでいる。
使いやすさ、わかりやすさ、利用者の心地よさが重視されている。システムのユーザビリティ・レスポンスという観点は
SIerのビジネスシステムにおいても他人事ではない重要な品質だ。


結論から言うと、SIerは使いにくいシステムを作り出し、システムに業務を合わせるように強いてビジネスをより苦痛なものにしつづけるべきではない。
そういう意味で、SIerは既に変わっているビジネスモデルに対して開発モデルも適応させるべきだろう。
SIerは今までシステムに対して業務を合わせろという発想で開発をしてきている。
ゲーム業界はユーザのニーズにシステムを合わせるという発想で開発をしている。
日本のSI産業が輸出産業になれない最大の弱点は、ユーザ視点の欠如だったのではないのか。
そしてそれが外資系IT企業が続々と日系グローバル企業の基幹システムを奪っていく理由だったのではないだろうか。
日本のゲーム産業が、ソフトウェア産業として唯一輸出で成功してきた理由から、SIerはもっと多くを学ぶべきだと思っている。


参考URL:
大手SIer(インド)の収益向上がとどまるところを知らない件
http://d.hatena.ne.jp/ktdisk/20100528/1274994634
住商情報システム(SCS)とCSKが合併した件について
http://d.hatena.ne.jp/gothedistance/20110225/1298599625