クラッシュオブクランとブーム・ビーチ分析


フィンランドのゲーム開発会社で、昨年ガンホーに買収され話題になったSupercell
「Clash of Clans」「Hay Day」はApp Storeトップセールスランキングで、それぞれ137カ国と96カ国で1位を獲得している。
そのSupercellが先日、Clash of Clans(クラッシュオブクラン)型の新作Boom Beach(ブーム・ビーチ)の日本語版をリリース。


今回は、そのクラッシュオブクランとブームビーチを比較しながら、分析していく。



図1.クラッシュオブクラン

図2.ブーム・ビーチ


まず、クラッシュオブクランとブーム・ビーチは戦略シミュレーションとタワーディフェンスなどのジャンルが合わさった
リアルタイムストラテジーゲームRTS)の一種である。RTSといえば、PC向けのオンラインゲームとして
Starcraftシリーズなど、1000万本以上の売上があるタイトルがあるジャンルだ。



図3.Starcraft2


日本ではソーシャルゲームというと、コナミドラゴンコレクション以降、カードバトルゲームが中心であったが、
海外ではZynga社のfirmvilleのような、シミュレーション物を中心にヒット作が生まれている。

図4.ドラゴンコレクション

図5.firmville


その差異の要因は以下のように考えられる。
日本のケータイ市場には当時、ガラケーガラパゴス携帯)と呼ばれる日本の家電メーカーが日本市場だけに
流通させ進化させてきたケータイ電話が普及していた一方、海外にはガラケー文化は無かった。
映像技術が弱いガラケーのために一枚絵でいかにビジュアル的な貧弱さをカバーするかに特化した結果として、
カード絵という形で画像を前面に打ち出すカードバトルゲームがもっとも日本のユーザの心をつかんだ。
そしてそれが受け入れられる下地としてジャンプで連載されていた遊戯王などによりカード文化が既に浸透していた。
結果日本ではケータイ電話で遊ぶソーシャルゲームとしてカードバトルゲームが非常に浸透したのだが、
海外にはガラケー文化がないため、逆にスマートホン向けのシミュレーションゲームソーシャルゲームのジャンル
として大きく浸透した。
(もちろん、サイバーエージェントグループのCygames社の神撃のバハムートがRage of Bahamutとして海外展開して
かなりのヒットを記録したことなど、日本で独自に発達したカードバトルゲームのジャンルが、
海外で注目された事例もないわけではない。)


今回取り上げたクラッシュオブクランとブーム・ビーチは、Supercellフィンランドの会社ということもあり、
そんな海外市場において発達してきたシミュレーション要素とタワーディフェンスと呼ばれる、
攻めてくる敵軍から自陣を防衛するゲームジャンルなどを融合させ、
PCオンラインゲームとして1000万人以上の市場があるリアルタイムストラテジー(RTS)に寄せたゲームである。


■ゲーム性

 クラッシュオブクランとブーム・ビーチはゲーム性においては同じ仕組みである。
街を作り、防衛設備を作り、敵の侵攻から街を防衛しながら、資源を採掘したり敵の街を攻めることで奪ったり
などしつつ、資源を投資して自分の街の攻めと守りを強力なものにしていく。

 ただし、クラッシュオブクランは全方位からの攻めが可能であるのに対し、ブーム・ビーチは
浜辺からの上陸戦という制約を課していて、守りも攻めも、攻略法を絞り込みやすくできている。


■課金ポイント

クラッシュオブクランとブーム・ビーチは課金ポイントも以下の様に同じになっている。


 資源を採掘するためには採掘の為の建物が必要である。その建物を建てておけば、時間さえ待てば
少しずつ少量の資源が溜まってくる。しかしそのままだと時間がかかり、その間に敵が資源を奪いにくるかもしれない。
なるべく早く資源をたくさん集め、攻めや守りなどの軍事力を高めたい。ここに一つ目の課金ポイントがある。
 課金するなり、時間を待つなどして、資源がたまった状態になると、建物などに資源を投資する。
建物を建てるためには大工さんが必要で、大工さんは大工の小屋の数だけしかいない。大工さんが建設を終えるまで
まってから次の建物を建てるという風に、時間をかければ建物はたつ。しかし資源がだんだん余ってきて
同時に複数の建物を建てたくなることがあるだろう。資源を資源のまま持ちすぎていると、敵が攻めてきた時に
すべて奪われるかもしれない。ここに二つ目の課金ポイントがある。
 また、時間をかけるなり課金するなりして、建てたい建物を建て終わったら、建物を進化させてさらに強化できる。
敵が強くなるにつれ、建物のさらなるレベルアップは必須になる。レベルが高くなればなるほど、建物の進化には
時間がかかるようになる。進化中の建物は機能を停止するので、長時間重要な建物が機能を停止していると
その間に攻められると危険である。課金すると待たなくても即座にレベルアップは完成する。
ここに三つ目の課金ポイントがある。
 さらに、クラッシュオブクランでタウンホール、ブーム・ビーチでは司令塔と呼ばれる本拠地の中核的な建物がある。
どんな建物を建てられるか、建物をどこまでレベルアップできるかという上限は、この本拠地の中核的建物のレベルで
決められている。しかも、後これだけが欲しいな、と言う時に限って本拠地の建物のレベル上限で建てられなくなってくる
ように、かなり計算されて上限も設定されているようだ。したがってこれを進化させなければならなくなる。
この建物は全建物の中でもっとも進化に時間がかかるように設定されている。
現実時間で何日も先になる。その間、ただ攻めたり守ったりだけをしつづけ、街が進化できないとなると、じれったい。
しかし課金すればこれも一瞬で終わる。ここに四つ目の課金ポイントがある。


まとめると、
1.建物の待ち時間への課金
2.同時建設可能件数への課金
3.建物進化待ち時間への課金
4.本拠地進化待ち時間への課金
となっている。


最初はあらゆる待ち時間は短いので、待てばいいと言う風にゲームを楽しめる。しかし、ゲームが進んでくると
待ち時間は何日というレベルになってくる。建てられる建物の種類が増えすぎ、同時建設可能数がもっとあったほうが
いいという風になってくる。待つよりも課金したほうがいいんじゃないか、という分岐点がやればやるほど迫ってくる
ようになっている。
これは、日本でよくあるカードバトルゲームでの激レアカードがでるかもしれない可能性に対する
ギャンブル的な課金とは違うタイプの課金システムである。


バイラル効果(話題性)

 クラッシュオブクランと、ブームビーチは、バイラル効果に対するシステム的なアプローチはない。
ここでシステム的なアプローチと言っているのはTwitter APIFacebook APIなどを使って招待キャンペーンを
展開したり、招待に対する招待ボーナスなどのインセンティヴを提供したりといったアプローチはないという意味だ。
 ゲーム内コミュニケーションについても、クラッシュオブクランにはチャットやクラン内チャットがあるものの、
ブーム・ビーチはそれもない。
 ここにSupercell社の、ソーシャルゲームに対する独特の考え方が見える。
バイラル効果をブーストしなくても、ゲーム自体の面白さがあれば自然なクチコミは起こるという考え方のようだ。


■見た目

 前出の図1、図2の画面をみて分かるように、ポリゴンチックなネイティヴアプリになっている。
キャラクターはアメコミ風ではなく、ユニバーサルデザインな感じにデフォルメされている。
ディズニーのポリゴンアニメ風という感じだ。
 必ずしも日本市場で受けるデザインではないが、まったく受け入れられないデザインでもない。
カードバトルゲームとは違い、色気やエロでは売っていない。全体的に、説明文などの文字は
少なめで、アイコンで何をすればいいかが良くわかるようにUIも組まれている。
 

■面白さ・ハマるポイント

 攻められにくい構造の街へと街のレイアウトを作り込んでいくのが面白い。頭の中では完成図ができていても、
建てられる建物の上限や資源などで、一気には完成させられない。また、登場する兵隊なども、
徐々に新しいものが登場するようになり、序盤に最適だと思っていた街の防衛線が、徐々に別の形に
しなければならなくなったりもする。やればやるほど、どんな街にすればいいのかということが変わってくる
ので中々やめられなくなってくる。
 また、実力に応じたリーグ制のランキングがあり、上のリーグにいけばいくほど報酬があがってくる。
自分の街の守りや攻め方がどれくらい正しいのか、世界中のプレイヤーと競い合うことができる。
 さらに、クラッシュオブクランにはあってブーム・ビーチには今の所ないが、クラン大戦という
クラン同士での戦いが用意されている。クランの中で活躍して賞賛されたいというのも、街をさらに強くする動機になる。


■やり込み要素

 プレイヤー対プレイヤーや、クラン対クランの戦いとして実装されているクラッシュオブクランは、
今の所ソロプレイのランキングしかやり込み要素しかないブーム・ビーチに比べて、きりが無い競争になり
やり込みの果てがない。
 その点、逆にブーム・ビーチは今後のアップデートに期待である。


■ブーム・ビーチへの今後の期待

 今の所、クラッシュオブクランのダウンサイズ版のように見えるブーム・ビーチであるが、
まだはじまったばかりなので、今後の開発フェーズにおいて徐々に色々な追加機能がこれからアップデートされてくる
と予想される。
 やはりクランやクラン戦など、クラッシュオブクランにあった機能はすべて欲しいところだ。
 とはいえ、クラッシュオブクランではできないことも、色々試して実装してほしいとは思う。
例えば、建物が建っている間の暇つぶしをゲーム内で行えるように他プレイヤーとのコミュニケーション機能をもっと
充実させてみるとか、クラッシュオブクランとブーム・ビーチのプレイヤーが何らかの形で対戦できるようにするとか
といったような事である。


■運営から運用へ

 いずれにしても、クラッシュオブクランもブーム・ビーチも今まで日本で流行ったタイトルやジャンルとは
まったく似ていないタイトルである。ガチャはないしカードはないし美麗イラストが売りでもない。
完全にゲーム性で売っているタイトルで、開発スタイルも異なる。
最大の違いは、日本のソーシャルゲームは週次でイベントを打つために延々と開発を続けるのに対して、
クラッシュオブクランやブーム・ビーチはイベントではなくアップデートを開発するという点だ。
もちろん、ネイティヴは変更のたびにApple申請が必要になり申請に一週間またされるという意味で頻繁な更新は
現実的でなく、ネイティヴで頻繁に更新したければガワネイティヴ化してWEB部分だけ更新
するしかないという意味でイベント運営は元々ガラケーでWEB技術により作られたカードバトルゲーム特有のものかもしれない。


 カードバトルゲームのタイトルが寿命を迎えまた別のタイトルに人が流れるときに一つの要因となっているのは
イベント運営の結果として新しくより強いレアカードが出続けた結果として、次第にカードのパラメータがインフレ
を起こして、昔からプレイしている人が昔手に入れたレアカードは、どんどんゲーム内で相対的に弱くなっていく
という現象である。数年運営が続いているタイトルであれば、今回でるレアカードは数年前のレアカードよりも
パラメータの桁が二つぐらい多い、ということもザラにある。
長く続ければ続けるほど損をした気持ちになり、常に今プレイしている人間が一番得をするというモデルに
なっているので、離脱率に歯止めがかからないのだ。そんなイベント運営は間違っているし、プレイヤーも最後には
後味が悪い去り方をするだろう。


 運営ではなく、運用に開発モデルを切り替えるべきだと思う。
全力で開発して、一度出したものをずっと楽しんでもらい、イベントではなく追加機能を開発していくべきだ。
毎週のようにイベントを開発していたのでは、毎週バグのリスクが付きまとうのだし、
スタッフ全員がそこについてまわるのだから黒字化も先に延びる。
それでもイベントを開発するのであれば、イベントの部品化、共通化コンポーネント化をすすめ、
ガワ、文言、グラフィクスなど以外の部分の再利用性を高めてバグを作り込みにくくすることが必須だと思う。


 運用フェーズになってしまえば、ある程度手放し運転しても、楽しんでもらえる
そんな風に作り込むことは可能であるとクラッシュオブクランやブーム・ビーチは気づかせてくれる。
今の日本の、主にカードバトルゲームの運営方法は、本当に正しかったのか?
KPIだの、データマイニングだの、ユーザ動向の数字を分析して常に新しい施策を
毎週のイベントで実施していく、だがそれが必須だと語られているのは、実は嘘なんじゃないのか?
素朴な逆説を、つきつけてくるタイトルだと思う。


 大事なことは、クラッシュオブクランという世界で一番ヒットしているタイトルは、
美麗カードだの、週次イベントだの、コミュニケーション要素だの、バイラル効果だの
日本のソーシャルゲームで重要視されてきたどんな要素もまったく使わないことで成功した、という事である。