むかしの会社のとなりのチームのマネージャー

いろいろ思う事があり、ふと思い出した。


それは新卒一年目で現場に配属されて出会った人の事だ。
新入社員として同期と共に皆さんの前であいさつしたとき、自分は一同の顔をみていて気になる人が二人いた。
やたらセカセカあるく、一人のおばさん(といったら失礼だけど)と、猛禽類に似た、冷めたまなざしが揺るがぬ一人の若い人。


後者の方が、私のOJTを担当してくださった先輩だった。
あの全員の出身校を考えて思うに、あの会社は有名大の文系と、無名大の理系を採用する傾向があったと思うけれど、
先輩は関西の有名大の卒業記念品かと思われる名刺入れを持っていた。メガバンクが第一志望だったらしい。
どういうわけか、SEになり、しかしパソコンは嫌いだと言っていた。
でも、先輩はSEとしてはかなりスキルが高く、一年目で設計込みのフェーズを全部まかされ、三年目だった当時で要件定義から納品まで持つPM案件をもっていた。
顧客のシステム担当にも、社内の他部署にも信頼されていて、ミーティングやプレゼンでの説得力が凄い。
物事がきれいにシンプルに理解できるうらやましい頭脳の持ち主だった。


が、今思い出すのは、むしろセカセカあるく一人のおばさんの事である。
あの方は普通の会社の肩書きで言うなら、課長クラスの役職で、担当部門の案件すべての進捗を掌握している人だ。
でも、第一印象は結構浮いているように見えた。
ただ、実際には顧客企業(実は出身母体の企業が取引の中心だ)の同じ現場に、その方の親父さんが出世しておられて、
ある意味ではその家族ぐるみの頑張りが私の配属先であったその部署のおしごとを根っこで支えているのであった。
その企業とあの会社の間は、表向き親会社子会社の関係ではないようにみえつつも、出向や移籍などで人員を相互に交換しあって
同じ会社であるかのように密接につながっている。


それは実はどうでもいい話で、おばさんの話はというと、色々と面倒見のいい人だった。
親分肌の言葉づかいを使い、みんなが元気にやってるかよく見ていた。
遅くなり給湯室でコーヒーをくんでたりすると、1言、2言でアドバイスをくれる。
管理職として頼もしい人だったのである。
ただ、でもどうしても思うのは、あの人はたぶん生まれつきの親分肌ではなさそうだということである。
むしろ、役割に対して、真面目に努力して日々役割を果たし続けようと頑張っている感じがする。
あの部署には結構、あのおばさんしか判断できないシステムが多い。
ほとんどのシステムの大半が、あのおばさんが書きまくったプログラムで出来ている。
優秀な若いSEは大勢そだってきているにしても、全体像を隅から隅まで理解しているのはあの人しかいない。
だから、おばさんは割とマネージャーとしての仕事だけでなくあの時点でもプログラムを書きまくったり
他部署からの問い合わせの電話に応えたり猛スピードでセカセカ働いていたのである。


まあそうはいっても、社員旅行とかでみんなが私服で集まるときなんかには、
やはりあの会社の人達は普通以上に良い身なりをしていて、子供も沢山いて恵まれた人たちなんだなと感じた。
自分はあの時もそして今も学生時代と同じ服装で、まったくオトナになれない感じだ。


私があの部署から異動になる最後の日、あちらの機械室に缶詰状態で仕事していたおばさんたちに最後のあいさつをした。
「どうせ嫌になってまたすぐ戻ってくるんじゃろ?」と言われた。


あの時の部長はもう定年しており、私の異動の翌年には、あの部署の2〜5年目ぐらいの若いエンジニアが丸ごと大阪に異動になった。
今、みんなどうしているのだろう。
外から見えるシックでクールなあの会社のイメージとは、ちょっと違うあの部署の田舎臭さが今とても懐かしい。