藤井太洋先生のGene Mapper -full build- 読書感想文

Gene Mapper -full build-

Gene Mapper -full build-

序盤は中々物語が走り始めず、登場人物の時代設定や社会状況を読者にインプットするための叙述がずっと続くので、
中盤ぐらいまでは、物語がどういう結末に向かって進捗するのかということも、進捗しているのかも一見、中々つかめないのですが、
中盤、とある人物の発作のシーンあたりから、それまでの様々な設定がアクセル全開で回転し始め
どこまで行くのか怖くなるようなスピードで進行していく作品でした。
こうなのかもしれない、こうなのかもしれないという全貌の想像を煽りながら、
その想像を凌ぐ展開がどんどんやってくる。ましてや、冗長に見えた序盤もすべてが必要不可欠な設定であった事を読み終えた後理解した。
物語は根幹の部分で二つの思想の対立になっていく。
ナチュラル志向と、テクノロジー信仰との対立。20世紀から様々な意見が対立しあうその構造の間に、藤井太洋先生は別の希望を見ていると知る事になる。
物語の中でも、主人公は実はその両方を行ったり来たりしているかに思えます。
どちらかに帰着する不安を抱えながら読み進めると、実は二元論でない帰結へと導かれる。
ただ、不可欠とはいえ物語序盤でかなり物語が進まない感じはちょっとあった。
つまり序盤の段階では、ほとんど大した問題がおきている状況になっておらず、ほとんど日常みたいなものが展開されている。
中盤で、さまざまな異変が続けざまに生じて以降突如として面白くなる。主人公の職能がそのまま解決策に活きる所も、綺麗な構造だなと思いました。
完全に物語が収束しきり、登場人物たちは最初立っていた心境からかなり上の志みたいなものに変化を遂げている部分も、
これを単なるエンターテイメントで終わらない作品にしている所だと思います。
内容紹介だけみると、クライシスFみたいな作品だと思ってしまうけど、全く別種の違う面白さです。