その27:サイコキネティック痴漢技術総合研究所

 スペッキヲをリクルートする過程で、倉橋総一郎はリクルーティングについて生まれて初めて考える羽目になった。
まず、笈菱グループの中に必要な人材を探すことは難しいと思われた。
 彼らは向こう半年まで分刻みのスケジュールを埋めきっている。そこから先も、予実によって変動はあるにせよ
ほぼ見込みの予定が見えている。
 何かがやれるためには、そのために必要な規模の人材が空いている必要がある。
しかし笈菱に限らず、組織は余剰な人材をほとんど許さないほど隙間なく何らかのプロジェクトを敷く。効率と合理性を追求する以上は
当然のことである。


 人材の空きがない以上、必要な人材はグループ外から調達する必要があった。
そのプロジェクトにとっては必要があっても、ほかの種類のプロジェクトでは別の人材が必要になるかもしれない。
そういうタイプのスペシャリストだ。
 知りもしない相手を雇うことはできない。ある程度は素性を知っている相手を、お互いにとって不幸な結果を生まないことを
確認した上で手筈の中にアサインしなければならない。
 スペッキヲの噂は、耳にしていた。そして、彼はあの工藤怜の弟でもあった。
もっとも、彼は高校時代から姉とは決定的に決別した人生を選んでいる。彼等の人生はまるで二つそろわなければバランスが取れないような
二つの極に振れたパズルのように思われた。


 世界中の時の鐘が凍り付いてしまうかもしれない。そんな月曜の早朝に目を覚まし、総一郎はいつもとは違う朝の始まりを知った。
スペッキヲからのデータの受信。それは81に分割されたPGP暗号メールであった。