その47:サイコキネティック痴漢技術総合研究所


 人間というものは、無力感を感じてショックを受けた時に、大きな当惑を感じるものなのであるが
実はその時、深層心理の中ではある働きが機能している。
 それまでの確信が突き崩れた結果として、深層心理はそれまでの間違った仮説ではなく正しい仮説を求めてあらゆる情報を無批判に信じ込みやすくなる。
その結果としてまた新たなる錯誤に陥ることもある。いずれにせよ、常識が粉砕されるような強いショックを受けた時に人は洗脳されやすい。
なぜこんなことが起きるのだろうということを、それを説明できる新しい理論とともに必要とし、ストレスコーピングを達しようという働きが心理の機能として備わっているからである。


 ラプラスの悪魔プロジェクトは、まさにそれを前提とした全方位型のシステムとして確立されつつあった理念モデルである。
だがそれは、始動した瞬間に時空をゆがめて宇宙に不可逆的な影響を開始しつつあった。
 宇宙の因果系に別次元の玉突きが影響を与える結果を生んでしまったのだ。
システムは、工藤怜の脳細胞をクローニングして作られた有機細胞ネットワークの上に走るモナドテンソルベースの論理言語でプログラミングされていた。
 システムがシステム自身を食い破り、ネットワークを突き破って素粒子を振動させ、時間を超えて過去にも未来にも影響を与え始めていた。
神だ、神が今、我々の技術力によってようやく物理空間にその肉体を得、過去を書き換えて宇宙の始まりの時点に自分自身の存在の爪痕を立てなおそうとしているのだ、と総一郎は思った。