その52:サイコキネティック痴漢技術総合研究所


 ギガビット・エンタープライゼスという環境で生き残るということは、まさにサバイバルゲームである。
外目には、一見華々しいスターたちが才能を花開かせる楽園のように見えるその場は、かつてここを抜け出した者がいうに「液体風邪薬を回し飲みして2,3日会社で不眠で仕事する」
場だったそうだから、いまだかつて楽園であったことはない。そうでありながらも、人はそこに強いやりがいを求め、そこで生き残ることに栄冠を見る。
そういう場所なのであった。


 どれほど有能なメンバーであれ、基本的には余計な仕事が増えることは望まないほど、”見えてる予定ですらパンク気味”
の日々を生きている。ここで生き残るためには、さまざまなテクニックを駆使しなければならない。


 テクニックの一つは、”なるべく大勢を巻き込め”ということである。”動かしたい人間が多ければ、まずその上の人間を巻き込め”ということである。
自分の仕事のために相手の協力が必要なのではなく、全員が関わる仕事を成功させるために、誰かが非協力的であってはならないということと
我々は組織の中で個々のポジションを奪い合っているのではなく、全員で成功することで外の別の組織と市場を奪い合っているのだということを、常に基調に響かせていく必要がある。


 とはいえ、誰も予定にない仕事が割り込んでくることは望んでいない。協力を仰ぐ前に、相手に負担が少なくなるよう事前の準備を整えていくことも重要だ。
何もかもを相手に丸投げするのではなく、
相手がほとんど何も判断しなくてもいいような、提示された選択肢のどれかを答えるだけで済むような、相手がどれだけ熟慮してもその選択枝のどれかを結論せざるを得ないような、
相手のための答えをはじめから予想して準備して提示することが大事だ。
 そういうことができないと、自分の価値が下がってしまう。周りの時間を食ってしまうだけの、伝言ゲームしかできない必要のない”機能”になってしまう。
何もかもを一人でやってしまうのであれば、勝手に失敗して自分で責任をかぶる"仲間ではない人間"として孤立してしまうだろうが、
何もかもを他人に丸投げするのであれば、必要のない伝言ゲームの間の"ノイズ"でしかないと思われもする。
他人を巻き込みながらも、相手が短時間で短い答えを返せるような依頼を、あるいは選択肢のどれかを選ぶだけで終わるような精度の高い選択枝を投げ、
テンポよく他人を巻き込んで合意形成を得ながら結果を出せる能力。それが、ここでのサバイバル能力なのだ。