その59:サイコキネティック痴漢技術総合研究所

 翌朝目が覚めた時、すべてがまるで嘘であったかのように気分は萎えていた。
記憶だけがあり、しかし自分はどこにもいけないままいつもの日常の中に目を覚ました、とスペッキヲは思った。
あの中年女性はどこの誰なのか。


 それはどうでもよくなってきた。愛車のジープに乗り、ユニクロに向かった。ウンコを漏らした下着もズボンも、捨てたのでその分買い替えるのだ。
ユニクロのズボンは安いというよりもポケットが大きいのでいい。大概のジーンズはポケットが小さすぎて大きな財布は入らない。
上着を着る季節の間はいいが、シャツだけの季節になったらやはりポケットが小さいズボンはつかえない、とスペッキヲは思っていた。
深く考えたわけではないが、昔からなんとなくそう思っていた。
ユニクロは不思議だ。あれだけ巨大になり、いろいろなものを売っていて売り上げも大きいのだろうが
街にユニクロを着ている人間は、自分しかいないようだなとスペッキヲは思った。
皆、なにがしかのこだわりをもって、もっと主張したファッションで身を飾る。自分にふさわしい格を意識しているのだろう。


 そういう格は、自分の場合は底辺だな、とスペッキヲは思った。
別にユニクロしまむらでいい。高いものが買えないほど金がないわけではないが、自分が選んだ商品によって自分がどのような人間かをそこで値踏みされてしまうのが面倒に思えて、
何もメッセージ性のない無印的なものを選ぶことにしているだけだった。
そして愛車のジープは洗車しない。
そういう用途のクルマならいらないと思っていた。走ればいいのだし、頑丈でいてくれればいい。だから時計もG-SHOCKでよく、デジタルとアナログが両方ついているシリーズのものと
人生の半分ぐらいずっと共にしている。


 帰り際に100均でクリアファイルをつっこんでおける薄いA4ワイドケースを買った。
大雨に打たれて鞄の中に水が入っても、フォルダからはみ出た部分が水でフニャフニャにならないように一式ケースにいれてケースごと鞄にいれることにした。


 そこまでやっておけば、もう帰り際にウンコが漏れそうになりトイレというトイレがふさがって大雨に振りこめられても
もう問題はないだろう。失敗からは常に何かを学び、同じことにならないための打ち手が打てるなら常に打っておかねばならないのだ、とスペッキヲは思っている。