その64:サイコキネティック痴漢技術総合研究所


 ギガビット・エンタープライゼスに、緊急の問い合わせが入った。
 航空自衛隊横田基地にて、試験運用中の偵察車両36体が突然行方不明になったという。
ギガビット・エンタープライゼスが開発し防衛省に納品された車両で、全方位型の通信傍受とレーダー解析のための新システム(LRスタグナント)を搭載した特殊な装甲車であった。


通信衛星を使って全車両のステータスを管理していると聞いている。足取りはおえないだろうか」
 と幕僚長からの依頼があった。


「可能ですよ」とスペッキヲは答えた。
 30分後、防衛省のヘッドクォーターの大型スクリーンが、それまでの車両ステータスの監視用のワールドマップではなく、
全車両の位置情報のワールドマップに切り替わった。
どよめきが起きたのは、太平洋上に存在することになっている車両が丁度36体のせいだけではなかった。


「ありがとう。車両は密売人によって盗まれ、太平洋上を移動中のようだ。それにしても御社の対応は速いな。
 ......我々の組織とは大違いのようだ。また連絡する。今回の件の借りは返すよ」


 ......だそうだ。五十嵐が振り返る。
 スペッキヲは、はい了解。と特に感慨もなく答えた。当たり前のことを当たり前にやっているだけで
ほかの世界では感謝されることがある。それは分かった。だが、本当はそれではダメで、あらゆる世界のそれぞれの良さに対して
互いに追いつきあっていけるようにはなっていかないものなのだろうか。
 まあそれは、行く行くは何とか変えていく道を探れるものなのかもしれない。
自分はそれとは別で、やるべき別のことをやるだけだった。
あの人なら、答えを知っているのかもしれない。スペッキヲは、倉橋総一郎をふと思った。