その92:サイコキネティック痴漢技術総合研究所


 ここはどこだろう、と城ケ崎ゆきは思った。
 自分の人生をさかのぼる長い長いトンネルのようなものが目の前に広がり、そしてそこを抜けた先に見知らぬ宮殿があった。
そして自分が誰なのかを少しずつ<思い出し>てきた。
 ゆきは、学生だった。
 そして卒業式を目前にして、出席日数が足りずに卒業できないのではないかという不安にさいなまれていた。
クラスはまるで国会議事堂の議会のような教室で、みな見知った顏が並んでいる。
水谷きららが「おはよー」と言って隣の席を空ける。


 昼休みになり、バイキング方式の食堂でハンバーグを取り分けて、ふと見知らぬドアを発見して開けると、
そこに空中を走る綱渡りのような空中回廊があった。気になってゆきは、ハンバーグを取り分けた皿をトレイに抱えたまま、その回廊を進んでいく。
「待ちなさい」と誰かの怖い声が聞こえ、ゆきはトレイを投げ捨てて走り出す。


 直径8メートルはある巨大な大樹がそびえていて、そこには縄梯子がかかっている。ゆきはそれを駆け上がって追ってくる誰かを振り返る。
しかし誰もいない。気配はむしろ上から迫ってきている。先回りされたのだと思い、ゆきは枝を伝ってとなりの図書館へのびる蔦を渡っていく。
高さは50メートル以上ある。地上を見下ろすと吸い込まれてしまう気がした。
鳥が降りてきて、なぜかその蔦を食いちぎろうとし始める。
 急がなければ、急がなければとゆきは思った。毛むくじゃらの怪物が追いかけてくる。