その96:サイコキネティック痴漢技術総合研究所


 とまあ考えてみたところで、結局のところ答えを摘出することは難しい。
 もう少し漠然とした抽象的な言い方をしたほうがむしろ大枠をつかむことができるのかもしれない。
つまりスペッキヲはストレスを感じていたのだ。そう換言すると、事は別の方向に展開する。彼がストレスを感じる理由などいくらでもあるだろう。


 少し飛躍して考えてみる。
 一人の労働者としてのスペッキヲという人物は、これはまあ彼は彼で、独特の価値観に従って仕事をしている。
その価値観は、なんとなくコンビニ店員を思わせるような、マクドナルド店員を思わせるようなところがある。それは要するに、
仕事における自分は、個人ではなく役割にすぎないという価値観だ。
そこに私情なり感情なりはさしはさまれることはない。万人の依頼を、万人公平に同じやり方で対応する。
人間である以上、例えば仲のいい相手、気に入らない相手というものはあるものだろう。セクシー美女もいれば、ライバルもいるかもしれない。
感情に従って行動するなら、好きな相手と嫌いな相手とでは同じ依頼でも異なる対応をするということになる。
それは、スペッキヲにはない。
 ない理由は簡単で、選り好みをする場合と選り好みをしない場合とでは、しない場合のほうがチャンスが多く、選り好みをしていたとしたら
そうではないスタイルで働く者よりも結果が出せないからだった。
 だが、それは彼が万人に対して温もりがあるとか公平であるということまでは意味していない。単純に、ありとあらゆる依頼を
機械の様にそっけなく対応するだけだということだった。そしてそれは、はた目にはなんとなく違和感を感じさせる態度でもあったのかもしれない。
なぜなら彼は、私情を捨て去れるほどクールな人間には見られていないからだ。どこかで彼は、その子供のような稚拙な感情をむき出しにして取り乱し、
ヒステリックに暴れて、ワーワー騒ぐのではないかとみられていた。そして人々はそれを密かに期待し、待ち望み、楽しみにしていたのだ。