その111:サイコキネティック痴漢技術総合研究所

 城ケ崎ゆきが住んでいたとされるのは、千葉県にある北初富と呼ばれる街だった。あまりにもさびれ過ぎて、
田舎以上に不便な街だ。若者たちは東京で生活をし、街には寝に戻る。だがそもそも若者たちの姿も少ない。
あるのは、イオンだ。道幅は狭く、スーパーの店員は血色が悪く、みなどこか諦めをにじませた顔をしている。
古い住宅街があるが、庭先の樹木はやせ衰えて、フェンスは破れていた。


 人々はただこの街を通り過ぎていく。そこに居つく人間がいるとは思われていない、そんな街。
あの日、光が爆発をして、自分はどこか遠くへ来てしまったようだ、とゆきは思う。


 それは思い出の中に少し似ていながらも、見知らぬことばかりが起こる世界だ。
そしてあの日というのは、水谷きららの悪ふざけによって、見知らぬ若い男と5人、駅前の商店街の裏路地の物陰で淫行に耽った夜のことだった。


 この世界が、それまでの世界と違う、ということにゆきは気づいていた。
誰もが少しずつ、それまでとは違う。夢の中での彼らのように。


 誰かが現れ、この世界から助け出してくれるのをただ待っていた。きっとそんな人がいるはずだからと思っていた。
だがそれは今じゃない。ゆきは窓を開け、物干しざおに下げたハンガーにブラジャーをつるした。