勇気


"昨日久しぶりにかけてくれて嬉しかった。
  今日は一日、なんだかすごく頑張れた”


その言葉が、僕の心に刺さった。


嬉しかったのは、こっちの方だぜ、なんて思う。でもそんなこと聞かされると
余計に嬉しくて、ジーンとした。


今までもずっと、おれたちはいつも互いの気持ちを確認し合って
しかしそこから先へは一歩も進めなかった。


互いが同じ気持ちだと思えたら、
もうそれで十分幸せだと思えたから。


普通は、たぶん、
その気持ちが変わってしまうのが怖いから、
絶え間ないデートや、ご機嫌取りや、身体を使った誘惑なんかで、
お互いの気持ちをずっと惹きつけ続けなければならないのかもしれない。


でも、
おれたちの間には、そういうものがなにもないのに
互いの気持ちを信じられるような気がする。
それは思い込みかもしれないけれど、そう信じられる気がする。


気持ちはどこへもいかない。
遠く離れていても、心はずっとそばでつながっていると感じられるのだから。


そしてそれは、
これからもそうなのだろうか……?


それほど豊かな人生は経験していない。
しかし、振り返ってみて思う事がある。


今までの記憶の中で
一番幸せだったころは、
おれたちが今、必死に守ろうとしているもの、追いかけているもの
そんなもの何一つ持たなかった頃が
一番幸せだったように思える。


 -- 心配しなくてもダイジョウブ。
予想通り、サイアクなことが起こるだけだよ。
そして、それが何かはおれたちはもう知っている。
その時、少なくともおれたちは、冷静でいられるはずさ。 --


人間が生きる理由は私はこうだと思う。


人はそれぞれ、幼いころから抱えている
ピースのそろっていないパズルを解いていて
それが完成しないままずっと忘れたフリをし続けている。


でも誰もが、
それが解かれるまでは、自分の人生を納得して終えることはできない。
その謎を埋めるために生きるのだ。