時代を経ても変わらなかったもの


 例えば音楽は共通語だと言ったりする。同じような意味で、哲学や文学も、いまだに今とは大分社会が違う時代のものが今でも理解されている。
それは何かというと、実はこういうことだろう。


 活版印刷によってテクストは写本しなくてよくなり、コピー機や機械化でまったく同じ型のものがどんどん複製され商品として流通するようになったり、
情報化によって情報が大量に流通するようになったりすることによって、社会に関わる様々な言説はそのたびごとにそれまでの言説では通用しなくなった。
ところが、そういう変化を何も受けていないものがあって、
それが人間だということである。


 人間がコピーされシミュラークル化したりするような時代にはまだ至っていない。
 結果として人は、太古の人々と同じような悩みや感情に繰り返し繰り返し直面しつづけているわけで、そのために哲学なり文学なり音楽なりは、
どれだけ時代が変わっても昔のものが共感できるまま残されている。