北野武のDollsを観た

 Y先生とのやり取りの中でビートたけしさんの話題が出て、Dollsという作品が良かったと聞き、観てみた。


 ちょっと古い作品だが、観てみるとその後、有名になっていく役者さんが大勢出ている。
 物語自体はラブ・ストーリーなのだが、何とも言えぬ、悲劇的な作品なのだった。


 社長令嬢との結婚が決まってしまった松本に捨てられた佐和子が、心を病んでしまう。退行的な行動をとる佐和子を世話するために
松本は自分と佐和子を赤いロープで縛ってしまう。


 そのロープは、松本が佐和子を縛るロープでありながらも、佐和子が松本を縛るロープでもある。


 作中においては佐和子の症状というのは、それがあるがゆえに佐和子が松本の視線を独占できるような何かである。
佐和子がその症状から回復したとしたら、松本はもう佐和子につきっきりにはならないかもしれない。


 佐和子が松本を縛るのは症状のロープであり、松本が佐和子を縛るのは、佐和子が何をしでかすかわからないので心配だというロープである。
この二人は一見、恋愛関係にあるようにはもはやみえなくなっている。


 虚ろな眼差しで、奥深い山の中などを徘徊していく。


 ところが実際には、彼らは二人がかつて婚約した思い出の場所を目指して歩いている。
もはや結ばれることによってしか、互いの関係は解決しなくなってしまう。


 しかし思い出の場所からは追われ、二人は崖からぶら下がる。二人のカラダは二人を縛っていた赤い糸によって密着する。


 それが幸せを意味するかどうかは、はた目にはわからないことである。
ただ、離れることが不可能になった彼らは、互いを迷わせていた何かからは、最終的には解き放たれてそこにあるのかもしれない。