言いたいこと無き言葉の羅列4


 そういえば昨晩は夜中に目が覚めた。午後に酒を飲んでしまい、夜中まで寝ていたのだった。夜中に起きだしてきて、クヨクヨと女々しい事を悩んだり書いたりした。
私はかつてある人に、酒と女で人生を滅ぼすだろうと言われた事がある。確かに私は、学生時代、ゼミの飲み会の頃にはすでに、飲み方がおかしかった。
日頃鬱屈させているわだかまりを、無礼講の名目でぶちまけてやるとでも、いうかのようだった。そんな風に鬱屈させる原因となっていたのは、当時住んでいた学生アパートが
大学の真裏、道路一本しか隔てていない場所にあったせいだろう。夜中でも学生たちは騒ぎまわっていたし、周辺の部屋からは騒ぎ声や喘ぎ声がつつぬけに漏れ伝わってくる。
自分だけが、そういう今時の学生生活からある種の意味で隔離されているような気がし、地元に帰るたびに、高校時代の友人らに対して尊大な態度でうっぷんを晴らしていたのが
徐々に酒の席にまで勢いあまって表出するようになりはじめた。それが、あの頃のことだった。
 高校時代に救急車で搬送されるほど飲酒したことがあり、自分は自分なりに自分の場合の限界酒量を察知できる。舌が痺れ始めるのがその合図で、そうなると嗚咽を堪えるまでもなく
そのままゲロが直接噴射される。喉が痺れているからフタが利かないのだ。そのショックでそのまま気絶することになるだろう。搬送されたときは、自分のゲロですべって転んだ音で
家族が目覚めて、救急車を呼んだそうである。
 一度限界を知ってしまうということは、逆に言えば、そこまでは無事行けるということを知ってしまうということでもある。
私は常に限界近くを試すようになった。本来遺伝的には酒が飲める体質ではなく、二日ほど酒を抜くと、翌日は一缶で
真っ赤になるほど酒に弱いのだが、脳がほとんどアルコールで酔って眠っても、残った部位だけで冷静さを失わない訓練を自分に課すことを修行のように試すようになった。
酔って冷静さを失わなかったにせよ、勢いで躊躇いを捨て去ることができるので、わだかまることなく本音を爆発させる。その場では、そういう姿を周囲は笑ってくれることも多いのだが……。
逆にそれを見た周囲は、後日またシラフに戻った私を見ると、普通にしているというだけの事が、どれほど私にとって抑圧の強い状況なのかを察してくれはじめるのか、ひどく周囲に気を使われるようになるのが常だった。
 それはともかく、昨日も、午後から飲んで、ある女性になれなれしいことを言ってしまい、不快な思いをさせてしまった事に気づいて、モヤモヤしながら、ふてくされて寝ていたという訳である。
 そして早朝になってまた寝ようとしたときのことである。これまでも時々そういうことはあったのだが、ゴミ袋の中から物音が聞こえた。コンビニ弁当の弁当ガラなどばかりはいっている
袋が、エアコンも切って無風状態になっているはずの室内で、カサコソと音をたてはじめたのである。ゴミ袋の中に、何かがいるのだという予感がした。時々、そういう音が聞こえる時はあった。
どうやって入るのかゴキブリがどこかから飛来して、直接ゴミ袋の口の中をめがけて飛び込んでいく様を想像し、そういうことが起きたのだろうと思って、袋を縛って、ゴミの日でもないのにゴミ置き場に
出してしまうのだ(トランクになっているので、曜日じゃなくても、外が散らかったりはしないタイプのゴミ置き場だ)。ただ私にはわからない。部屋でゴキブリをみたわけではないし、
ゴミ袋の中にいることを確認したわけでもない。そしてゴミ袋という、口が宙に浮いている袋をゴキブリが駆け上がることはできないだろうし、たとえその触覚がどれだけ鋭敏であっても、
袋の中に食い物があることをゴキブリが感知できるとは信じられない。飛んで上から袋に入っていく様というのは、まさにそうしなければ絶対にこういう状況にはなりえない唯一の可能性だと思える。
 これまでも、何か自分の体調が良くない朝などに限って、何か自分の体調が惹きつけてでもいるかのように、謎めいた昆虫の類が部屋に出現することが多かった。そしてまた、今朝も、何かを暗示するかのように
不吉な昆虫の気配がムンムンと立ち込めたのである。私は、袋を縛って、またゴミを出してしまった。今回の前兆はどんな、ヤバいことが起こる前触れなのだろうか。