焦りのカード

 ”焦りのカードを引いたようだな、おまえは今焦っている。掌の上で踊らされ、相手のことで頭の中がいっぱいになっているようだな”と、記された七夕祭りの短冊のようなものが、急にそうめんの中に浮かんでいることに気づいた。

「おいそうめんじゃないよ、頼んでない」

 ウェイターを呼んで、事を荒立てないように小さな声で伝えたら、怪訝な顔をされた。そこにはそうめんなどなくなっていた。はじめからなかったかのように。あるのは誰かが捨てていった割引チケットだった。

 

 そうめんを食べると死ぬかもしれないと思い始めると、世界はそうめんで満ち満ちていることが分かってくる。自動車も、飛行機も、本も、かっぱ巻きも、乳房も。なにもかもがそうめん製だなと思う。

 盆地で牧畜を営む我々にとって、それは死活問題そのものであった。