ラグビー電車

 平日の中央線は地獄である。通勤ラッシュの上り電車には、ワールドカップを控えたラグビー選手たちが、花園を目指してなだれ込んできていた。すし詰め状態の車内は、汗と、磯の臭いがした。

 すでにドアまで隙間なく人が詰まり、乗車率200%オーバーの車内の、ドアが閉まらない。人が挟まっている。発射ブザーがなる。駅員が叫ぶ。そこに、また新たなラグビー選手の黒い影。

 

クオーターバックをつぶしに行け!」

 競馬新聞を握りしめていた男が雄叫びを上げ、声に弾かれて選手が走った。彼が猛烈に駆け込み乗車を仕掛けてくる。ドガア!

 反対側のドアがはちきれて飛んだ。人が玉突きのように反対側から投げ出され、ラグビー電車は発車したのである。

 

 車内はまるで、スクラム地獄だった。暴れん坊将軍のような男がラリアットを派手にカマし、パイルドライバー英二と呼ばれた男がくんずほぐれつ。スプリントを回せと青年が言ったが、ボールがこぼれるような形になってタッチダウンである。

 そうかなるほどなあと思う。ZOZOTOWNの社長は野球球団が欲しいといっている一方で、パナソニックやらトヨタのような大企業は、ラグビーチームを持っているのだ。スクラムを組むとき中島は5番の位置にいるものなのだ。

 

 次の駅に到着しそうになる。自分はドアのそばに立っている。嫌な予感がした。

 ドアが開いた。

クオーターバックをつぶしに行け!」

 競馬新聞を握りしめていた男がまた来ていた。声に弾かれて全身バネのような男が叫んだ。

「おりまあす!!!!おりまあす!!」

 彼が大きく構えて、いまにも破裂しそうに思えて、私は歯を食いしばって目を閉じた。私は彼に突き飛ばされ、知らない駅のホームに投げ出されて途方に暮れた。次発電車の時刻をみた。次の電車は、翌々日の朝の各駅停車となっている。