無の中に

 何もない無の中に揺蕩う夢を見る。

 微睡の中で光の波紋が広がっていく。

 音もなく、孤独を感じる。何もかも思い出せないくらい遠い昔のことのようで。

 

 寒さが身に刺さる。ぼくはおびえていた。何もわからず、誰もが予想もつかないことを考えていて、何を言っても、驚いた顔をして信じられないと言った。

 東ティモールの紛争地域で生まれたぼくは、親の死体に抱かれているところを、とおりかかった国連平和維持軍の兵士に見つかり、しばらく軟禁されていた。世界は何かに憤っている。大雨の中、爆撃の音が鳴り響いていたのを覚えている。仲間の一人は、木がヘンになったとき、女友達を殴って、まだ幼い乳房を噛みちぎろうとした。ぼくに見つかったことを知ると彼は、走って川の中に飛び込んだ。流れが速くて、彼は向こう岸にたどりつかなかった。まぶしさに目がくらんで見失い、彼を助け出せなかった。いや本当は、助け出そうとしなかったのだ。

 ディリ県に軟禁されていたぼくは、東ティモール民族解放軍によって救助された。武器弾薬の扱い、ナイフを使った近接戦闘、ジャングルの中でのサバイバル術などはそこで覚えた。

 いくつかの戦いを生き延びて、今は英雄エリック・プリンスが作ったブラックウォーター社の傭兵として、見知らぬ戦場へと駆り出されている。どれだけ戦いにつかれても、俺たちは、戦争以外の生き方をまだ何も知らない。