彼女さんが留守のため

 今日は彼女さんが留守なので、一人分のお弁当と、久しぶりのストロング・ゼロをドン・キホーテで買って帰った。
 昨晩はちょっとしたことで自分がプンスカ無言になってしまい、そのまま明日の夜までしばしのお別れとなる。同棲生活は三カ月を過ぎ、もしこれが、このまま今生の別れになったらどうなるだろう、なんてことを仕事中考えていた。僕は、彼女さんを笑顔にさせることが、できない男だと自分で分かっている。



 自分が彼女さんをほんとうに愛しているのかどうか、本当はよくわからない。ただ、帰ってきてみて、まっくらで寒い部屋の明かりをつけると、彼女さんの部屋着が彼女さんがまるで椅子にすわっているかのように、靴下からボトムズ、トップスと人の形にかけてあるのをみて、切なくなった。にもかかわらず、エロ動画をみてオナニーしてしまった。高橋しょう子さんのAVを見て、オナニーしてしまったのだ。他の人はどう思うかわからないが、僕には彼女さんは高橋しょう子さんに表情が似ているように思える(そのぐらい魅力的だという意味で)。


 初めて会ったあの日、僕らは実写版の「心が叫びたがっているんだ」を一緒に見て、そして色々、電子書籍について情報交換をし、そしてそつなく別れそうになっていた。LINEであれほど激しくやり取りした割には、僕は人見知りが激しく、実際には消極的なのだった。とにかく、そつなく帰ろうとする僕を、彼女さんは公園につれていった。そして、寂しい人間である私と、接吻をしたいと言ってくれた。しかし、僕らはずっと勇気が出ず、やっぱり帰ろう、人が一杯いる、向こうのベンチに怖そうな黒人の親子も来てる、などとグダグダになっていった。
 あの頃、彼女さんはすでに付き合っている相手がいて、その人ともう何年も一緒に暮らしていた。だから帰ったほうがいいに違いなかった。しかし彼女さんは、自分は帰りたくない、と言った。でも、もしかするとそれは、LINEであんなに激しくやり取りしてきたのに、このままだと不満なまま帰ることになるかもしれないと僕のことを心配して、そう言ってくれていたのかもしれない。


 彼女さんには、そういうところがあるように思える。自分が何をしたいのかではなく、相手が満足していないなら、自分を犠牲にしてでももてなしたい、となるところがあるような気がする。
 彼女さんと一緒にいて、色々なワガママをきいてもらって自分はずっと幸せだったと思う。けれど、その間ずっと、彼女さんが歯痛になるほど歯を食いしばって我慢していたことを、僕はだんだん気がつくようになった。自分なんかは、確かにとるに足らないつまらない男で、一緒にいても、念仏みたいなことばかりボソボソ言っている退屈な人間にすぎない。けれど、これからは自分だけでなく、彼女だけでもなく、一緒に笑顔になれるようなことを見つけていきたい。なんかそんなことを、ストロングゼロに酔いながら、泣きながら思った。


 いままでありがとう。苦労かけたね。これからもホンマたのんます。