そこがどこでもいいじゃないか


 そこがどこでもいいはずだった。ここがどこでもいいのと同じように。どこに立っていたとしても、私たちは自分たちの頭蓋の中にいるに過ぎない。旅がしたいのではない。別人の頭蓋に移り変わりたい。それが叶わないのだから、旅などしても仕方がない。変わりたかったのではなく、変えたかったのだろう。自分にふりそそぐ侮蔑の眼差しを。おまえなどただの単なる物体にしかすぎないという眼差しを。そしてそれはかなわない。自分は自分でしかないのだ。いつでも未熟で幼稚であるほかないのだ。少しずつ失われていく酸素に苦しみもがきながら、何も始まっていない交差点に立つまったく知らない誰かと人生が入れ替わることを夢想してしまう。私に希望というものがもしあるのなら、そういう不可能な何かを信じられるほどの何かに憑りつかれる瞬間がこなければならない。