ソーシャルゲーム業界の昨今

 高いトラフィック、大量同時アクセス、大規模なデータ制御技術などインフラやパフォーマンスチューニング分野の最先端技術をふんだんに生み出してきたとされるソーシャルゲーム業界も
パズドラ一強からモンストとの二強、FGO一強みたいな状況を経てランキング上位が固定化された状況のまま閉塞感を深めているように思われる。
 アプリや各種プラットフォーム(iOS/AndroidだけでなくPC用の環境、Steam、Chromeアプリ、GREEMobageなど)に平行展開しながら、ランキングでは目立たなくてもトータルでは
圧倒的に高い売り上げを上げている某ハイブリッドアプリのような特殊な例もあるものの、パズドラを生み出したガンホーのその後のタイトルがどれもパズドラほどにはヒットしない現状をみても分かるように、
市場での勝利の方程式をだれもしらない持久戦になっているのが今の状況のようである。


 日本でソーシャルゲームがバブルを迎えていた頃、世界ではスカイリムのようなオープンワールド形式の大規模なアセットを動的にバンドルするようなタイプのゲームシステムが主流になっており
開発スタジオは大規模化、かかる予算も膨大なものになり、失敗したら即大赤字というようなリスクの大きなものになっていた。たぶん小島監督コナミを追われたのも、そのあたりの流れによるところが
大きかったかと思う。



 日本にはそのレベルで開発体制を組める(いわゆるトリプルA級と言われる)大きなスタジオが片手で数えられるほどしかないとされている上にAAA級の予算をかけてしまうと、日本市場だけにウケてもそれだけではかかる開発費を回収できる売上に到達しないという状況がある。
 そんな中で、スクエニは中国市場を求めてテンセントと手を結んだりした。
 逆に、任天堂が、ソーシャルゲーム会社と提携してソーシャルゲームに乗り出してきたのもここ数年のことだった。一方その相手先のソーシャルゲーム会社のほうは、
コナミメタルギアライジングのプロジェクトを救ったとされるプラチナゲームスと相次いで提携して、豊富な予算を元にコンソール向けのタイトルを開発したりもする状況にあるようだ。
ただその動き自体はけっこう前の情報で、それから新しい情報が公で話題になったのを聞かない。やはり難航しているのかもしれない。


 いずれにせよ、ビッグタイトルを作って、リスクをかぶって大きな予算で賭けにでるような開発を強いられつつあるゲーム業界は、しかしその結果として
確実に利益が返ってくるとは言い切れず、パズドラ以降のガンホーのタイトルのように、盛大にコケないために慎重になりつつ、成功モデルをいまだ模索しているのが現状なのではないかと思う。
一部のファンを熱狂させることはできたとしても、その一部のファンからのリターンだけでは、プロジェクトを維持できるだけの利益が回収できない。その分の期待を海外市場展開に投げかけている。


 このリスクのある博打のようなビジネスモデルの間で、昨今目立ち始めているのが、
マイネット、ファンプレックスのような会社である。これらのビジネスモデルは、他社が手放したゲームタイトルを買収して自社に蓄積されたノウハウを活かしながら運営を引き継ぎ、
リスクのある新規開発を行わないままラインナップを多角化し、同時並行的に膨大なタイトルを運営してどれかがコケてもリスクヘッジされるような分散投資を組みつつ、
薄利多売、ロングテールに近い発想で堅実に安定的に収益をあげていくことを目指す試みである。


 この試みは中々興味深い。というのはSIerなどでよく、開発と運用がフェーズだけでなく体制が分離されるということが見受けられたものだが、ソーシャルゲームにおいて
もはや会社そのものが分離されて成立しつつあり、しかもその状態で互恵的な関係性を維持しながら市場でも歓迎されているようだ。
 ましてや投資家からは、リスクが上手くコントロールされたそのビジネスモデルが非常に魅力に映っているようである。
 実際にはソーシャルゲーム各タイトルにはライフタイム(≒寿命)が存在する。話題にならなくなり飽きられる時期がくる。やっていることが時代遅れでダサいという風に思われる時期がくる。
 だから、運営を引き継ぐ中で右肩上がりを目指していくというのは非現実的なはずで、可能なのは可能な限り右肩下がりの角度を横ばいに近づけ、
かかる工数を削減していくなかで利益を削りだしていくというそれなりにきびしいテーマを抱えたビジネスモデルではある。
 しかし確実にヒットするビックタイトル開発の必勝法というものがない中で今、この薄利多売の低リスク、ロングテールビジネスのモデルは今後徐々に主流の流れになっていくのではないか。
 利益が100億円でる巨大プロジェクトを諦めて、1億円の利益を稼ぐプロジェクト100ラインを、手早く組むためのビジネスモデル。これがこれからの数年でどうなっていくとあなたは考えるだろうか?


参考:
ゲームの「事業買収」で急成長のマイネットが上場承認
http://thestartup.jp/?p=15726

【インタビュー】設立1年半で躍進を遂げたファンプレックス代表の下村氏に訊く…ゲーム業界の構造の変化に注目した「開発」と「運営」の違いとは
https://gamebiz.jp/?p=181017